『「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策』(asahi.com)という記事が5月30日に掲載され、ネットユーザーは大荒れの様相を呈しています。
この技術は「ディープ・パケット・インスペクション(DPI)」。プロバイダーのコンピューター(サーバー)に専用の機械を接続し、利用者がサーバーとの間でやりとりする情報を読み取る。どんなサイトを閲覧し、何を買ったか、どんな言葉で検索をかけたかといった情報を分析し、利用者の趣味や志向に応じた広告を配信する。
似たようなものとしては、Amazonの「おすすめ商品」やGoogleの「アドワーズ」などがあるのですが、これがサイトレベルでなくプロバイダーレベルで行われてしまうということで、一般ユーザーからすると「冗談じゃねぇよ!」という話なのです。
ちなみに、総務省の『ライフログ活用サービスWGからの報告』(PDFファイル)によると、ライフログとは「利用者のネット内外の活動記録(行動履歴)が、パソコンや携帯端末等を通じて取得・蓄積された情報」とのことで、具体的には
- 閲覧履歴(ウェブのアクセス記録、検索語句、訪問先URLや滞在頻度・時間、視聴履歴等)
- 電子商取引による購買・決済履歴
- 位置情報(携帯端末のGPS機能により把握されたもの、街頭カメラ映像を解析したもの等)など
と書かれています。さりげなく入っている「など」の表記が曲者ですね。
ちなみに、『利用者視点を踏まえたICT サービス(長いので中略)ご意見に対する考え方』(PDFファイル)をザッと読んでみた感じでは……
賛成と思われる意見(要約)
- ソネットエンタテイメント株式会社:ライフログサービスは利用者に新たな価値を提供するサービスであり、新たな産業創造の可能性がある。事業者としてその可能性に大いに期待している。
DPI などの個別のログ取得手法にはプライバシー保護や通信の秘密などの課題はあるが、提言案に示されたような配慮原則に基づき、利用者の十分な理解の下に進めれば問題はないだろうと考える。 - 社団法人オープンモバイルコンソーシアム:利用者保護の観点だけではなく産業発展の視点を盛り込み、新たなビジネスの萌芽を摘むような過度な規制を排し、業界の積極的な関与を促す提言がなされたことに賛同する。
また、各事業者が集まる場の設置や具体的な対応を進めるための技術の研究開発などの支援を期待する。 - ニフティ株式会社:DPI技術の活用は、「行動ターゲティング広告」という新たなビジネスの可能性がある。
通信の秘密・個人情報・プライバシーの保護などを考慮しながら、利用者に十分な理解を求めた上で実現の可能性を模索していくことが新産業育成の観点からも重要。
反対と思われる意見(要約)
- 社団法人インターネットユーザー協会:DPI 技術を活用した行動ターゲティング広告については、推奨しないむね明記すべきである。
その他の意見(要約)
- 楽天株式会社:プライバシー保護はネットに限った問題ではないので、ネット以外も含めた一般的なプライバシーの問題としてとらえるべき
- 社団法人インターネットユーザー協会:位置情報に個人識別性がないとされているが、位置情報住宅地図などとによって、比較的短期間で個人が容易に推定できる可能性があることを明示すべきである。
- イー・モバイル株式会社:EMnetでは、契約固有ID(個人識別性なし)は通信時に利用者が「通知」「非通知」を選択可能。しかしながら、利用者が選択の上、契約者固有IDを送出しないことによる一部サービスが利用できないことについては、最終的に利用者の判断に委ねられるものと考える。
- イー・モバイル株式会社:ライフログを利用したサービス事業者は、利用者に対して、自らのサービスの仕組及び情報の第三者提供・取得に関する扱いについて透明化を行い、利用者の不安感払拭を図ることが、今後のライフログを利用したサービスの更なる発展に重要。
こんな感じで、明確に反対意見だと分かる団体はほとんどありませんでした。(これ以外に賛成・反対の団体があれば、ソースを明示してもらえれば追加していく予定です)
ざっと読んでみた感想
まぁ、これだけユーザーの趣味や行動が多様化している現在、広告収入が落ち込んでいる業者にとっては「いかに効率よく広告の収益率を上げるか」は死活問題なワケです。それは大変よく分かります。さらに、業者にとって「ユーザーの情報を収集すること」は何のデメリットもなく、目くじら立てて反対する理由がないというのも一因になっているでしょう。
しかし、「僕たちの好みに合致した広告が配信される」というメリットなんてきわめて限定的なものです。
正直、これが実現したら「違うユーザー向けの広告が配信されてしまった」ぐらいのミスは間違いなく起こると思います。その程度ならまだ深刻な問題ではないですが、その時に果たして「プライバシー対策は万全です」と胸を張って言えるかどうか……
どれだけ対策を万全にしていても、ICカードで厳重に管理された部屋からでさえ情報流出してしまう以上、リスクを全くのゼロにするというのは不可能です。
広告会社の皆さんには申し訳ありませんが、僕はDPIを活用した広告には反対です。
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